マンチェスター・ユナイテッド大学

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ラルフ・ラングニック氏 ユナイテッド暫定監督就任?!ラングニックがもたらすものとは?

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こんにちはMasaユナイテッドです。

 

11月26日、急転直下、衝撃のニュースが飛び込んできました。「The Athletics」の記者、デイビッド・オースティン氏が

マンチェスター・ユナイテッドラルフ・ラングニック氏を今シーズン終了までの暫定監督として招聘することが濃厚となった」

と報じました。スールシャール監督の解任に伴い、後任の監督に関しては様々な憶測が流れ、その候補の1人としてラングニック氏の名前があったのも確かです。しかし、理想的ではあっても現実的ではないと見る向きも多かった...。

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ところが一転、暫定監督として指揮した後、2年間アドバイザー(コンサルタント)としてクラブに留まるという条件で合意したと報じられています。正式発表はまだ行われていませんが、ラングニック氏は現在ロコモティフ・モスクワの開発責任者を務めており、この契約の解除がロコモティフと合意し、労働ビザが下りた段階で発表される見通しです。12月2日(木)にアーセナル戦を控えていますが、その前ぐらいには正式に決まるのではないかとみられます。

 

今回はラングニック氏の経歴や指向するプレースタイルを簡単に紹介し、ユナイテッドへどのように適応させるのか、またユナイテッドでのラングニック氏の役割について考察します。

以下項目です。

①ラングニックの経歴

ラルフ・ラングニック氏はドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州バックナング出身の63歳。現在はロコモティフ・モスクワのスポーツ部門と開発部門の責任者を務めています。指導者の経歴としては、ドイツでシュツットガルトハノーファーシャルケホッフェンハイムを指揮した経験を持ち、2012年からはレッドブル・ザルツブルクRBライプツィヒの総括SD(スポーツ・ディレクター)に就任。2015年からはライプツィヒの仕事に専念しSDと監督を兼務しました。18-19シーズンには、ホッフェンハイムで翌シーズンから新監督に内定していたユリアン・ナーゲルスマン監督の繋役として、SD兼監督として再任。チームをチャンピオンズ・リーグ出場圏内の3位に導いています。

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その後、ライプツィヒのアドバイザーを務める傍ら、レッドブル・グループのスポーツ部門兼サッカー開発部門の責任者に就任。傘下であるニューヨーク・レッドブルズアメリカ)やレッドブルブラガンチーノ(ブラジル)のアドバイザーを務めました。

2020年7月にはレッドブル・グループのサッカー開発責任者を辞職。自身のコンサルタント会社を設立しています。そして、その顧客第一号がロコモティフであり、第二の顧客がユナイテッドとなります。なお、20-21シーズンからACミランで「全権監督」という立場での招聘の話もありましたが、破談になったという経緯があります。

ラングニック氏は「ゲーゲン・プレスの生みの親」の1人とも呼ばれ、トーマス・トゥヘル監督や、ナーゲルスマン監督、PSVのロジャー・シュミット監督などが教え子として名を連ねています。

 

②指向するプレースタイル

そんなラングニック氏が指向するプレースタイルは「ストーミング(嵐のような強襲)」と言われ、攻守両面で強度の高いプレッシング・フットボールが大きな特徴です。キーワードとしては

✅8秒ルール
✅素早いトランジッション
✅エクストリーム・プレッシング
✅同サイド圧縮

✅攻守一体
✅技術の質より量
✅25歳以下の選手の獲得

などが挙げられます。8秒ルールとは「8秒以内にボールを奪い、10秒以内にゴールへ至る」という本人の言葉通り、ボールを失ったタイミングで激しいプレッシングを仕掛け、高い位置で再びボールを奪取し素早くゴールに迫るという戦術コンセプトのことです。プレス、カウンタープレス、カウンターアタックはラングニックのスタイルには欠かせない要素で、プレスの掛け方には同サイド圧縮や、パスを誘導する「トラップ」、プレス発動のきっかけとなる「トリガー」と呼ばれる明確な方法が設定されています。有利な守備のために攻撃し、高い位置からの守備を攻撃に直結させるという点で攻守一体とした考え方であり、素早いトランジッションが生命線となります。

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ラングニックにとっては「空間」よりも「時間」の方が大事であり、ペップに代表される、選手の配置(ポジション)を重要視するポジショナル・プレーの概念とは真逆の考え方と言えます。そのプレースタイルからミスが出る事はある程度許容されており、運動量が求められることからラングニックの獲得選手は、足元の技術よりもフィジカル、スタミナが重視され、25歳以下しか獲得しないという方針を持っていたのは有名な話ですね。

今のプレミアリーグでタイトル争いを繰り広げるチームには、ペップ、クロップ、トゥヘルとドイツサッカーの経験が色濃くあり、世界のサッカーのトレンドとしてもドイツの指導者や戦術の影響は絶大です。そのドイツサッカーの発展に大きく貢献してきたラングニック氏のユナイテッド就任は、大きな興奮と共に迎えられることは間違いないでしょう。

 

③ユナイテッドへの適応

ラングニックのスタイルをどのようにユナイテッドに当てはめるのかが最大の焦点となります。可能性としては2通り考えられます。1つは完全にラングニック流を当てはめるやり方。もう1つは基礎戦術だけ落とし込むやり方です。

まずはラングニック流をまるまるユナイテッドにも適合させる方法から見ていきます。ラングニックが好むとされるフォーメーションは、2人のストライカーを配した4-2-2-2や4-4-2、また3-5-2もホッフェンハイムライプツィヒで使用しています。しかし、使用フォーメーションは4-3-3や4-2-3-1もあり、チーム状況に合わせて柔軟に対応できることも伺えます。

ここでは議論をシンプルにするために、4-2-2-2をユナイテッドに当てはめた場合を想定しますが、やはりポイントとなるのは2トップと2人の攻撃的MFです。最前線のストライカーにも裏へのランニングやプレスでのボール奪取を求めるとなると、当然ロナウドカバーニなど、ベテランで運動量が落ちる選手は適応が難しくなります。そして2列目である攻撃的MFというのも、大外ではなくハーフスペースでのプレーに重きを置き、ライン間で受ける動きやボランチサイドバックとの連携が要求されるという点で、生粋のウィンガーやワイドストライカー的な要素の強いサンチョ、ラッシュフォード、グリーンウッドの適性にやや不安があります。ただ、サンチョに関してはドイツサッカーに慣れているので、問題なくフィットできる可能性も高いかもしれません。

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ダブルボランチは、インテンシティや運動量の面でマクトミネイやフレッジはハマる可能性が高いですが、逆にポグバやマティッチの運動量や機動力では厳しく見えます。サイドバックにはストライカーへのロングボールで局面を前進させられる能力と、高い位置で攻撃に関与する能力が求められます。ショーは問題なさそうですが、ワン=ビサカは攻撃面での改善がここでも求められそうですね。

センターバックとキーパーにはラインを高く押し上げる事が求められます。この点ではヴァラン、バイリー以外のセンターバックの適性と、前へ出る守備を得意としていないデ・ヘアにはやや不安があるでしょう。

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ラングニック流ユナイテッド

このように、ラングニック戦術への適性という面では、スカッドでは対応できない可能性が十分にあり、ラングニックのプレースタイルを再現できないことも考えられます。さらに問題なのが「時間」です。ラングニックが監督として指揮するのは今シーズン終了までの半年間です。一から戦術を落とし込むには時間的に少し厳しいと思いますし、2~3日ごとに試合があるのでできるトレーニングも限られます。トゥヘルはチェルシーに来てすぐにチームを変化させ、CL制覇を成し遂げましたが、ラングニックのスタイルは独特であり、ユナイテッドの選手たちのこれまでの経験や戦術理解度で対応できるかも疑問です。その厳格な方針に、少なからずショックを受ける選手はいると思います。

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そして個人的に最も危惧しているのが、来シーズンからの正式監督との関係です。今シーズンをラングニックに任せ、ラングニック流のプレースタイルに変貌を遂げたとしましょう。しかし、それを引き継ぐ監督がどのようなプレースタイルを指向するのか、現時点では不明です。噂に上がっているのはパリのポチェッティーノアヤックスのテン・ハーグですが、ラングニック要素を含んでいるのはポチェッティーノの方です。テン・ハーグはその根底にペップに代表されるポジショナルプレーの要素を含んでおり、配置の妙で安定したポゼッションを構築する事に長けています。ここのズレが大きければ、チームは混乱する事になりかねず、結構慎重になるべきことだと思います。

そこで、もう1つの方法であるラングニックには基本戦術の整備をしてもらうという考えが出てきます。個人的にはこの可能性が最もリスクなくチーム力を上げられると考えています。ラングニック要素の中でも現ユナイテッドにマッチしやすいのが、ハイプレスからの縦に素早い攻撃です。前任者のスールシャールは現スカッド若くてアスリート能力の高い選手達を揃えています。プレスの整備から着手し、トランジッションやビルドアップを徐々に改善してもらうだけで大きな効果があると思います。プレスやトランジッションなどの基礎戦術を持つ事は、どんな監督が新監督になっても障害になる事はないはずです。

ラングニック流に拘り過ぎず、現スカッドを活かす方向で指導してもらえればロナウドを始めベテラン選手外しを心配する事もないですし、ウィンガーシステムを捨てる必要もないでしょう。そして恐らくラングニック自身もそのように考えているのでは?と思います。チームを素早く整備し、PL4位以内、あわよくばCLとFAカップのタイトル獲得を目指す事が期待されます。

 

④ラングニックの役割

ユナイテッドで暫定監督としての期待もさることながら、ラングニックに求められるのは来シーズンからの2年間のアドバイザーとしての役割が大きいと思います。アドバイザーとしてクラブの内部に入り、補強やアカデミー部門などスポーツ・ディレクターやフットボール・ディレクターに近い役割を担う事になります。クラブの成功には3つのC(Concept=コンセプト、Competence=能力、Capital=資本)が必要だとするラングニックは、「SD機能のアウトソーシングという次なるステップに進んでいます。その試みが自身のコンサル会社設立であり、ユナイテッドは彼にとって恰好の顧客という意味合いもあります。ラングニックがコンセプトと能力を提供し、ユナイテッドが資金を提供するということです。

コンセプトをラングニック側に投げるという意味では、ユナイテッドの哲学が脅かされる恐れもあります。また、ラングニックは全権掌握を希望する傾向があり、ビッグクラブでは初の仕事となる為、ユナイテッド上層部と軋轢が発生するという懸念もあります。しかし、ミランで叶わなかったメガクラブでの仕事はラングニックの夢でもあります。上手く立ち回ってくれると期待したいです。

選手獲得に関しても、ラングニックの影響が出ることが予想されます。ラングニックはレッドブル時代にホーラン(ドルトムント)、ウパメカノ(バイエルン)、ザビツァー(バイエルン)、マネ(リバプール)、キミッヒ(バイエルン)、ショボスライ(ライプツィヒ)、コナテ(リバプールなどの若手選手を獲得しています。彼らが後にどのよう成長したのかは言うまでもないと思いますが、錚々たるメンバーですね(笑)。ユナイテッドでどこまでの権限が与えられるかはわかりませんが、若手中心の選手獲得になる事が予想されます。

現在のユナイテッドはジョン・マータフをFD、ダレン・フレッチャーをTDに置いていますが、組織全体を見た時に、レベルの高いフットボールの経験や知識が不足しています。マータフ以前にはフットボール素人のウッドワードが仕切っていたことで、数々の失態や迷走を繰り返してきましたが、上層部のクオリティはシティやリバプールチェルシーに溝を開けられた大きな要因です。ここにラングニックほどの大物を連れてきたことは評価に値しますし、他のライバルクラブに対してもアドバンテージになり得ます。

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「ユナイテッドがようやく一人前のフットボールクラブになった」

ラングニックにはそう言われるように、クラブ内部の構造や考え方を変えてもらう事が求められますし、次世代の選手、指導者、スタッフが育つように様々な場所に種をまくことも期待されます。ユナイテッドの上層部はここ2、3年、若い選手の獲得と育成に力を入れ、速い攻撃を志向するフットボールという「ユナイテッドのDNA」に回帰したいと説明してきました。しかし、これまでその計画には道筋がなかった...。ラングニックの登場により、クラブはついに近代化への一歩を踏み出すことになります。   

 

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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